2013年1月9日(水)-11日(金) の3日間、北海道のルスツリゾートにて、脳と心のメカニズム第13回冬のワークショップが開催されました。「快・不快」をテーマに国内外から9名の講師をお招きして、ご講演をお願いしました。ポスターセッションは48件の発表があり、総勢87名の参加による、活発なディスカッションが行われ、充実したワークショップとなりました。
集合写真ならびに会議の様子
初日(9日)はスペシャルセッションのテーマ「快・不快」に関連して3名の国内外の著名な研究者にご講演いただきました。松元先生は、内的な動機付けが報酬でむしろ低下する「undermining」という現象の神経機構についてお話し下さいました。Small先生は、食物の選択は食後の血糖値上昇によって強化される「好き嫌い」とは独立した神経メカニズムに支配されているという驚くべき発見についてご紹介されました。Berridge先生は、「好き」と「欲する」神経回路は別物である一方、「欲望」と「恐れ」には共通する神経機構が存在することなど、「快・不快」に関係する神経回路の構成について最先端の知見をわかりやすく整理して下さいました。
2日目(10日)のトピックセッションでは「匂い」に関係した講演3題が並びました。風間先生は匂い認識の神経機構についてショウジョウバエを使った研究成果をお話し下さいました。内田先生は、ドパミンニューロンの報酬応答を作り出す神経メカニズムについて、オプトジェネシス等の最先端の分子生理学的技法を駆使して解明された成果を紹介して下さいました。投射先や細胞の種類を特定しながらドパミン応答の計算過程を詳らかにする過程は一流の推理小説のようで、一同固唾を飲んで聴き入りました。三浦先生は、複数の神経の活動から情報を読み出す際に、神経群に共通するノイズが入力しているといくら観測回数を増やしても得られる情報が頭打ちになるという理論的な背景から説き起こして、匂いを検出する梨状皮質では匂いを嗅ぐタイミングに合わせてノイズの相互相関が低下する、という興味深い解析結果を紹介くださいました。三浦先生は内田先生の生理学的なデータを解析されており、理論と実験研究の橋渡しという本ワークショップの趣旨にかなうご報告でした。
3日目(11日)は3名の若手研究者による最新の研究成果のご報告でした。山本慎也先生は、サルの尾状核の尾部に、目標がなんであるか(What)と目標がどこにあるか (Where)の情報が共存しているという結果を、山本真也先生は、チンパンジーの社会性行動についての最新の知見を、渡邊先生は視覚意識が一次視覚野の活動とは無相関であるという従来の定説を覆す結果を報告されました。
9名の講師の先生方